2023年12月~2024年1月、三浦宏規を主演に迎え、東京・大阪にて上演されたフレンチロックミュージカル『赤と黒』。スタンダールの傑作『赤と黒』を原作に2016年にパリで上演された『Le Rouge et le Noir, l’Opéra Rock』の日本版です。2023年3月~4月に『Le Rouge et le Noir ~赤と黒~』と題して宝塚歌劇星組でも上演されています。
■基本データ
フレンチロックミュージカル『赤と黒』
ジャンル:ロックミュージカル、フランス純文学、ロマンス
初演:2016年(フランス・パリ)
日本での上演カンパニー:宝塚歌劇団(2023年)、梅田芸術劇場(2023年)
原作:スタンダール『赤と黒』
オリジナル・スタッフ:アルベール・コーエン(プロデューサー)
日本版スタッフ:ジェイミー・アーミテージ(演出)
■キャラクター
・ジュリアン・ソレル
田舎出身の庶民でありながら、美しい容貌と明晰な頭脳を持ち、支配階級への嫉妬と憎悪に燃える、野心家な青年。革命家ナポレオンを崇拝している。
一幕ではレナール家の夫人・ルイーズと恋に落ち、二幕では後述のラモール家の娘・マチルドと恋に落ちる。美貌と頭脳に加えた不思議な魅力が、周囲の女性を惹きつける。
頭は良いが非常に繊細。何事にも情熱的なだけに、恋に溺れると周りが見えなくなるタイプ。ややゼロヒャク思考。
・ルイーズ・ド・レナール
レナール家の夫人。自身の生い立ちや政略結婚の経験からか、「結婚に愛は必要ない」と言い切り、夫のレナールとの関係は冷え切っている。しかしながらそんな彼女もジュリアンと出会い恋に落ちると、不倫関係でありながらその恋に溺れてしまう。
ジュリアンにとっての特別な女性になる彼女。信心深くありながら、やや妄信的でもある。
・マチルド・ド・ラモール
ジュリアンに恋をするもうひとりの女性。ルイーズとは打って変わって、利発で聡明、それゆえプライドも高い。貴族の令嬢でありながら、貴族の男性を「天気の話しかしない、つまらない」と一蹴。ジュリアンを「他の男性と違う」と見初め、自身の部屋に招くこととなる。しかし部屋に招かれたジュリアンの態度は…。
・ジェロニモ
人気歌手で、ジュリアンの友人。色男。作品のストーリーテラーとして客席を導く。ジェロニモがジュリアンの人生を語る形式で物語は進行していく。客席と物語を行ったり来たりするメタ的な存在で、よく客席に語りかけ、ときに沸かせてくれる。
物語の中ではジュリアンに恋の手ほどきをしたりもする。
・ムッシュー・ド・レナール
ヴェリエールの町長。不安定な時代だっただけに、貴族たちもいつその地位を脅かされるかわからない。そのうえヴェリエールは小さな町だ。そのため彼はいつでも他者からの評価を気にして、見栄を張ることや富や名声を得ることに執着する。ルイーズとの仲は良好とはいえないが、悪からず思っていそうではある。主に一幕で活躍。
・ラ・モール伯爵
マチルドの父。二幕にてジュリアンを秘書として雇う。賢く冷静でありながら、内に小さからぬ情熱を秘めていそうなジュリアンを評価し、気に入っている。手のかかる娘・マチルドに苦悩しながらも、その愛は深い。非常に良い父である。作中の良心といえる。
・ムッシュー・ヴァルノ
貴族。恵まれた境遇の人々への強い嫉妬心を抱き、常にのし上がることを考えている。そのための手段を選ばない。人心操作に足けており、不安定の時代を生き抜く強さがある。町長の肩書きを持つレナールとは犬猿の仲。作中ではコメディを担う場面も多いが、見方によれば一番恐ろしい人物でもある。
・ヴァルノ夫人
ムッシュー・ヴァルノの夫人。
・エリザ
レナール家の小間使い。ジュリアンに恋心を抱くが…。
■あらすじ
【第一幕】
ジェロニモが客席を『赤と黒』の世界へ迎え入れ、物語は幕を上げる。
舞台はナポレオンによる帝政が崩壊し、再び王政となった19世紀初頭のフランス。
田舎出身の庶民、貧しい製材屋の末息子ジュリアンは、虐げられながら育った境遇から、町を支配する貴族を憎み、嫉妬し、這い上がってやろうという野心に燃えている。
そんな彼は、家庭教師としてヴェリエールの町長レナールの家で雇われることに。歳の近い小間使いエリザに思いを寄せられるが、ジュリアンが欲しいのは小間使いではない。彼は愛と栄光を手に入れるため、ある夜ルイーズの部屋に押し入る。最初は拒むルイーズであるが、ついには彼を受け入れ、二人は禁断の愛を育むこととなる。そんな二人を、小間使いエリザは目撃してしまう…。
レナール家に嫉妬し、レナールを嫌うヴァルノは、いつもと様子の違うルイーズに不信感を抱く。エリザに詰め寄ると、エリザは二人の不倫関係をヴァルノに打ち明けてしまった。レナールの弱みを握ったヴァルノは、ルイーズの不倫関係を匿名の手紙にてレナールに報告。ジュリアンはレナール家を追い出され、ルイーズと引き裂かれてしまうのであった…。
【第二幕】
レナール家を追い出されたのち、パリにてラモール侯爵の秘書として勤めることとなったジュリアン。
ラモールにはマチルドという娘がいた。マチルドは貴族の令嬢でありながら、退屈な貴族男性を嫌っている。そんなときに出会ったのがジュリアン。最初は彼に興味のなかったマチルドだが、彼の内に燃え盛る炎を見て、「他の男とは違う」と見初め、自分の部屋に招待する。
しかし部屋を訪れたジュリアンは、他の貴族男性と同じようなつまらない態度。マチルドに気に入られようと飾った振る舞いが裏目に出たのだ。落胆したマチルドはジュリアンを追い返してしまう。
一方ジュリアンは、言い寄ったと思ったら突き放す女心の不可解さに苦悩。見かねた友人のジェロニモはジュリアンに「嫉妬をさせろ」とアドバイスする。それに従い行動を起こすと、たちまちマチルドはジュリアンに心をかき乱されてしまい、ジュリアンに「結婚を申し込んで」と懇願、愛の契りを結ぶ。庶民と恋はおろか子どもまで作った娘に当初は激怒した父ラモールであったが、最後には娘の幸せを願い、結婚を認める。
しかしながら、ラモールのもとに「ジュリアンは野心のために女性を誘惑し、貴族に取り入り、財産を狙う人間だ」という内容の手紙が。差出人はなんとルイーズ。ヴァルノが策謀を巡らせ、ルイーズにその手紙を書かせたのである。
当然マチルドと引き離され、ルイーズの裏切りにショックを受けたジュリアンは、ルイーズのもとへ向かう。神に祈りを捧げていた彼女に銃口を向けるジュリアン。彼は引き金を引いた。ルイーズは倒れた。その罪で、ジュリアンは逮捕されてしまった。
マチルドの計らいもむなしく、ジュリアンは自ら極刑を求め、死刑となる。
執行を待つジュリアンのもとにやってきたのはルイーズ。ヴァルノに騙されていたことを知り、彼に控訴を勧めにきたのだ。
しかしながら、生き延びたところでジュリアンとルイーズに未来はない。ジュリアンは死を選んだ。彼は死に際にルイーズに愛され、満たされた様子で、死刑執行の場へと向かうのであった。
■まとめ
情熱的な愛の物語を、美しい舞台装置や衣装、魅力的な歌やダンスで魅せるフレンチロックミュージカル『赤と黒』。日本での再演が期待されます。