ミュージカルのキャラクターやあらすじを、普段観劇しない人にも分かりやすく解説します。今回は、大ヒットミュージカル”レミゼ”こと『レ・ミゼラブル』のあらすじ・ストーリーや、キャラクターなどについてお伝えします。
基本データ
正式タイトル名:
「Les Misérables」
上演歴:
1980年 パリ(初演)
1985年 ロンドン
1987年 ブロードウェイ
1987年 東京
1995年 10周年記念コンサート
2000年 ブエノスアイレス
2002年 メキシコシティ
2006年 ブロードウェイ再演
2009年 25周年UKツアー
2010年 25周年記念コンサート
2010年 スペイン
2010年 USツアー
2012年 韓国
2013年 トロント
2013年 スペイン
2013年 プエルトリコ
2014年 ブロードウェイ再演
主なスタッフ(演出家、脚本家、作曲家など)
初演演出:ロベール・オッセン
製作:キャメロン・マッキントッシュ
ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー
作曲:クロード=ミシェル・シェーンベルク
作詞:アラン・ブーブリル(フランス語版歌詞)
ハーバート・クレッツマー(英語版翻案)
追加作詞:ハーバート・クレッツマー
脚本:クロード=ミシェル・シェーンベルク
アラン・ブーブリル
潤色・演出:トレバー・ナン & ジョン・ケアード
キャラクター
ジャン・バルジャン
- 力持ちで基本不死身
- パンを盗んだことがきっかけで19年服役
- 仮出獄中に逃亡し、追われる身に
- コゼットを引き取り溺愛する
代表曲:「彼を返して」
社会復帰に苦しむ元犯罪者。
ミュージカルの冒頭は心が荒み切ってますが、仮出獄中にミリエル神父にかばわれ改心。
生まれ変わる決意をしてそのまま逃亡。
事業を起こして成功し、皆から慕われて市長にまで登り詰めます。
ミリエル神父にもらった銀の燭台は宝物。
ジャベール
- バルジャン逮捕に執念を燃やす警部
- 刑務所生まれ刑務所育ち
- 思い込んだら一直線。融通は効かない
- 帽子とこん棒はマストアイテム
代表曲:「星よ」
一言でいうと、美川憲一の「さそり座の女」みたいな男です。
「あなたは遊びのつもりでも 地獄の果てまでついていく
思い込んだら 命 命 命がけよ~♪」
バルジャン逮捕のためにどこまでも追いかけてきますが、力ではバルジャンにかなわず、いつも取り逃がしてしまいます。
ファンテーヌ
- コゼットの母でシングルマザー
- 美しい髪の持ち主
- 勤務先でセクハラ、パワハラなどのイジメにあう
代表曲:「夢やぶれて」
当時タブーだった未婚の母であることがバレて、働いていた工場をクビに。
テナルディエに預けていた娘コゼットの養育費を稼ぐため、自慢の髪を売って衝撃のベリーショートを披露したり、娼婦になったりと波瀾万丈の人生です。
荒んだ生活で衰弱し息を引き取りますが、死ぬ間際にバルジャンに娘を託します。
テナルディエ夫婦
- ぼったくり酒場&宿屋の経営者
- 詐欺や強盗等お金のためならなんでもする
- 預かっているコゼットに辛く当たる
代表曲:「宿屋の主人」
お金大好き夫婦。
ファンテーヌから幼いコゼットを預かっていますが、あれこれ理由をつけてお金を巻き上げています。
大金と引き換えにコゼットをバルジャンに渡しますが、「もっと高値で売ればよかった!」とずーっと根に持っています。
エポニーヌ
- テナルディエ夫婦の娘
- 片想い相手であるマリウスのためなら何でもする
- 男装して学生運動に紛れ込む
代表曲:「オン・マイ・オウン」
両親の悪事を手伝ったりと、男勝りな女の子。
インテリなマリウスに夢中ですが、彼からは妹のようにしか思われていません。
それどころか、マリウスとコゼットの恋の手助けをさせられたりと、かなり不憫な役回。
ファンからの人気が高く、もはやミュージカルの実質的なヒロイン。
マリウス
- ブルジョア出身のお坊っちゃま
- コゼットに恋をする
- 学生運動に参加し、一人生き残る
代表曲:「カフェ・ソング」
エポニーヌからもコゼットからも惚れられるモテ男。
当の本人はコゼットに夢中で、浮かれすぎて道端で昇竜拳を繰り出すお茶目な一面も(新演出版)。
お坊っちゃまですが、王党派の祖父に反発して貧乏学生たちと革命に身を投じます。
コゼット
- ファンテーヌの娘
- バルジャンに育てられる
- 道でぶつかったマリウスと少女漫画のような恋に落ちる
代表曲:「心は愛に溢れて」
THE お嬢様。
バルジャンに引き取られた後、いっぱいの愛を受けて成長します。
バルジャンを本当の父と思い、ファンテーヌや自分の出生については知りません。
しかし、バルジャンが暗い秘密を抱えていることは薄々勘づいています。
アンジョルラス
- 反王党派の学生運動のリーダー
- バリケードを築く
代表曲:「民衆の歌」
革命を目指す学生達のカリスマ的存在。
恋にうつつを抜かすマリウスや、酒浸りのグランテールなどの学生仲間に渇を入れつつ、なんだかんだちゃんと面倒を見てあげるお兄さん。
最期は、包囲されたバリケードで玉砕することを選びます。
あらすじ
プロローグ
舞台はフランスの港町トゥーロン。
盗みと脱獄の罪で19年服役していた<ジャン・バルジャン>は、警官の<ジャベール>から仮出獄証を受け取り刑務所を出ます。
久しぶりに自由を手にし、心躍らせるバルジャンでしたが、人々は犯罪者であるバルジャンを差別し、彼をのけ者にします。
そんなバルジャンを唯一迎え入れてくれたのは年老いた<ミリエル司教>でした。
しかし、バルジャンはミリエル司教の銀食器を盗み出し、警官に捕まります。
しょっ引かれたバルジャンを見たミリエル司教は、「その銀食器は自分が彼にあげたものだ」と証言し、さらに銀の燭台もバルジャンに与えます。
ミリエル司教の行動に衝撃を受けたバルジャンは、まっとうな人間に生まれ変わる決意をし、仮出獄証を破り捨て逃亡します。
第一幕
数年後、事業を成功させ人々の人望を集めたバルジャンはある街の市長になっていました。
バルジャンが経営する工場で働いていた<ファンテーヌ>は、同僚にシングルマザーであることを暴かれ工場をクビになります。
ファンテーヌは、<テナルディエ夫婦>に娘<コゼット>を預けており、その養育費を稼ぐために娼婦となりますが、警官に捕まりそうになったところをバルジャンに救われます。
ファンテーヌを捕まえようとしていたこの警官こそ、街に赴任してきたジャベール警部でした。
予期せぬ再会に怯えるバルジャンでしたが、ジャベールから「バルジャンが捕まった」と知らされ驚きます。
自分の身代わりに捕まった人がいることを知ったバルジャンは、葛藤の末、偽バルジャンの裁判へ乗り込み、「自分こそが囚人番号24653のジャン・バルジャンだ」と主張するのです。
その後、ファンテーヌを看取ったバルジャンは彼女の娘コゼットを迎えに行くため、ジャベールの制止を振り切りテナルディエ夫婦の宿屋に向かいます。
使用人のように扱われていたコゼットを大金と引き換えに救い出したバルジャンは、再び行方をくらませたのでした。
数年後、パリのプリュメ街に移り住んでいたバルジャンとコゼットは、ジャベール、テナルディエ夫婦と再会してしまいます。
この時コゼットは、反王党派の運動に参加する学生<マリウス>と恋に落ちていました。
マリウスは自分を慕う<エポニーヌ>に頼んでコゼットの家をつきとめ、再会した二人はお互いの気持ちを確かめ合います。
しかし、ジャベールに居所を気づかれたと思ったバルジャンは、明日イギリスに引っ越すとコゼットに告げます。
一方のマリウスも、<アンジョルラス>や学生達と明日バリケードを築いて革命を起こすことになります。
一幕のラストは、バルジャン、ジャベール、エポニーヌ、マリウス、コゼット、テナルディエ夫婦、アンジョルラス、学生達といった登場人物が勢揃いし、「明日が来れば神の御心がわかる」と歌います。
第二幕
夜が明け、学生達はバリケードを築きます。
マリウスがコゼットに宛てた手紙を読んだバルジャンは、コゼットの恋人が革命によって死ぬかもしれないことを知り、マリウスを助けようとバリケードへ向かいます。
失恋を嘆いていたエポニーヌも、せめてマリウスのそばにいたいと、男装してバリケードの中に潜り込みますが、マリウスをかばい銃弾を浴び、最初の犠牲者としてマリウスの腕の中で息を引き取ります。
一方、革命を阻止しようとしていたジャベールはバリケードに紛れ込んでいましたが、少年<ガブローシュ>によって正体が暴かれ拘束されていました。
バリケードに到着したバルジャンはジャベールの身柄を引き受け、銃殺したと見せかけて彼を逃します。
殺されるものと思っていたジャベールは驚き憤りますが、バルジャンは「君の職務だろ、恨みなどないぞ」と言い放ちます。
バリケードが総攻撃を受けた後、運良く生き残ったバルジャンは瀕死のマリウスを連れて地下の下水道へと逃げ込み、彼を家まで送り届けようとします。
下水道ではテナルディエが多くの死体から金目の物を抜き取っており、その時にマリウスの指輪も盗まれてしまいました。
下水道を出るとジャベールが待ち構えていますが、バルジャンはマリウスを救うために時間が欲しいと頼み、ジャベールはその頼みを受け入れます。
敵だと思っていたバルジャンに命を救われ、さらに自分も彼を逃してしまったことにより、自分が信じてきた正義が揺らいだジャベールはひどく動揺し、自分の信じる道を見失ってセーヌ川へと身を投げるのでした。
時は過ぎマリウスとコゼットの結婚式の日、バルジャンの姿はありません。
マリウスに過去を告白したバルジャンは、娘に迷惑がかからないようにと二人の元を去っていたのです。
しかし、テナルディエ夫婦がマリウスから盗んだ指輪を持って結婚式にやってきたことにより、自分を救出したのがバルジャンだと気づいたマリウスは、コゼットを連れてバルジャンの元に向かいます。
銀の燭台の炎に照らされながら命尽きようとしていたバルジャン。
彼は駆け付けたコゼット夫婦に真実をしたためた手紙を渡します。
そして、現れたファンテーヌとエポニーヌに手を引かれ、死後の世界へ旅立って行くのでした。
まとめ・見どころ
感動的な物語が名曲で綴られ、メインキャストに印象的なソロ曲があるところが、本作の魅力でしょう。
1幕ラストで、それぞれが明日へ思いを馳せて歌う「ワン・デイ・モア」も見どころのひとつ。
また血の繋がらない娘・コゼットに、無償の愛を捧ぐバルジャンの姿や、バルジャンを追うジャベールの正義の形など、それぞれの想いが交錯し合う、切なくて温かいストーリーにも注目です。