基本データ
「1789-バスティーユの恋人たち-」
元々はフランスで初演されたフレンチ・ロック。ミュージカル作品。
日本では2015年に宝塚歌劇団月組で初演。
東宝版公演:2016年 帝国劇場、梅田芸術劇場
2018年 帝国劇場、新歌舞伎座、博多座
スタッフ:小池修一郎(潤色・演出)
キャラクター
ロナン・マズリエ
・貧しい農家の息子
・国王の名の下、父を殺されフランス王室や貴族に強い憎しみを抱き革命を夢見る
・オランプと身分違いの恋に落ちる
オランプ・デュ・ピュジェ
・フランス王太子ルイ・ジョセフの教育係でマリー・アントワネットからも信頼されている
・気が強い一面もあるが賢明で心優しい女性
マリー・アントワネット
・言わずと知れた浪費家のフランス王妃
・フェルゼンとは秘密の恋仲
ルイ16世
・フランス国王
・彼自身は質素で地味な趣味を嗜むが、王妃の浪費癖により国民からの反感を買うことになる
アルトワ
・ルイ16世の弟だが王座を狙っており、国王一家を陥れようと企んでいる
・何かとオランプにちょっかいを出す
ロベスピエール
・第三身分出身の弁護士、議員であり革命家
カミーユ、デムーラン
・ロベスピエールと同じ志を持った革命家の仲間
あらすじ
~第一幕~
舞台は18世紀フランス。フランスの大多数である第三身分の国民は貧困や飢えに苦しんでいた。農民ロナンは国王の名の下、父親を不当な理由で殺され貴族への強い憎しみを抱きパリへ向かう。
そこで第三身分でありながら革命家として活動するロベスピエール・カミーユ・ダントンと出会い、自分にも幸せを求める権利があることを知り一緒にフランスの新たな時代を築くことを夢見る。
一方、ヴェルサイユの宮殿ではマリー・アントワネットをはじめとする貴族たちが贅沢な暮らしを謳歌している。オランプは王宮で王太子ルイ・ジョセフの養育係として働く。彼女はアントワネットとフェルゼン伯爵のパレ・ロワイヤルでの逢引を手助けすることになる。
無事二人を密会させることに成功するが、尾行する秘密警察からアントワネットを守るためにオランプが吐いたとっさの嘘により、そこで偶然野宿していたロナンが無実の罪で逮捕されてしまう。自分のせいで投獄されたロナンを助け出すためにオランプは奔走する。
無事ロナンをバスティーユ牢獄から助け出し、パリまでの道すがら二人は次第に惹かれあっていく。
ほどなくしてルイ・シャルルが病気で亡くなり失望するオランプ。葬儀に忍び込んだロナンと再会し愛を確認し合う。しかし王室を憎むロナンと王室に仕えるオランプは身分違いの恋であることに直面する。
ロベスピエールら第三身分の議員たちは国民議会を追い出されたことにより王族・貴族への反感がより高まり、革命の炎は日に日に燃え上がっている。
~第二幕~
ロベスピエール達を中心に、第三身分の議員や民衆たちは団結し王族を中心とした第一身分や第二身分と闘うことを決意する。
王室への反感の声が高まる中、アントワネットはまだフェルゼンのことを深く愛していたが彼への最後の手紙をオランプに託す。
オランプとフェルゼンの密会中、二人はアルトワ伯に見つかってしまう。
そこに現れたロナンはオランプを守るためにアルトワと対峙したがなんとか騒動は収まった。
また再会したロナンとオランプ。やはりお互いへの愛を諦められない二人は「自由になったらまた会おう」と約束する。
そして革命派の民衆たちはついに武器を取り、貴族たちと戦うことを決意する。
いよいよ身の危険を感じ亡命の準備を始める貴族たち。
フェルゼンはアントワネット一家に亡命の援助を申し出るが、彼女はそれを拒否し彼に最後の別れを告げ、夫ルイ16世とフランスに残り添い遂げることを決意する。
オランプはアントワネットから役目を解かれ自由になり、ロナンに会うためパリへ行く。二人は無事再会し、二人で生きていくことを誓い合った。
ついにロナンや革命派たちはバスティーユ牢獄を襲撃し、フランス革命の火ぶたが切って落とされた。だが、ロナンは父と同じように射殺されてしまう。
悲しみに打ちひしがれるオランプや革命派の仲間たちは彼の死を無駄にしないようにと、フランス人権宣言を採択する。
まとめ
これまでもフランス革命を取り扱った作品は多くありましたが、「ベルサイユのばら」などそのほとんとが王室や貴族からの視点で描かれたものでした。
「1789」は民衆にスポットを当てたフランス革命の物語です。
民衆が革命に目覚め、燃え上がっていく様子を描いた舞台「1789」はまた別の角度からフランス革命を見ることができます。
絢爛豪華な王室と、みすぼらしい民衆の対比も舞台をより深く味わうポイントです。
衣裳の違いはもちろんのこと、東宝版では舞台装置が上下の二層構造になっている点に注目していただきたいです。
シーンによって舞台上部に貴族、下部に民衆がいて、物語が進むにつれ二つの階層を隔てる壁(下層から見ると天井、上層から見ると床)が上下し勢力の強弱などを視覚で感じることができます。
楽曲も魅力的で、物語終盤いよいよバスティーユ牢獄襲撃の直前に流れる「サ・イラ・モナムール」は恋人たちが互いに愛を確認しながら革命の炎へ飛び込んでいく決意を歌った力強いナンバーです。
「サ・イラ・モナムール」はフランスで「愛する人よ、きっとうまくいく」という意味で、現代を生き、悩んだり迷ったりする私たちにもやる気や勇気をくれる名曲です。
ほかにも名曲ぞろいの本作をぜひDVDやCDでもお楽しみいただきたいです。
貴族は貴族なり、民衆は民衆なりに苦労がありそれぞれが悩み恋をし、同じ人間であることに違いはないと感じることができる作品です。そんな歴史が今のフランスを作ったと思うと感慨深いものがあります。